Epilogue - クリザンテーモと薔薇の花 -

- クリザンテーモと薔薇の花 -


マッシミリアーノには恋人がいて、

ある日突然、倒れたまま

目を覚まさないことを聞いていた。


教会の入口をくぐると辺りの空気はひんやりと冴えかえり、

モザイクで彩られた大きな円形の柱は歩く速度にあわせて

ゆっくりと僕の視界の中を移動した。


彼の恋人は美しい白髪(はくはつ)の老紳士だった。


柩の中はまるで天国の片隅のように

やさしい色のクリザンテーモと彼が生前好きだったという薔薇の花で飾られていた。


あどけない顔で眠る老紳士は、それはそれは安らかな姿で横たわり

とてもいい人生だった、

彼にそう言いたかったに違いなかった。


僕が立ち去った後、

彼は痩せた老紳士の中指の指輪を

元通り左手の薬指に戻し

長年連れ添った恋人にお別れのくちづけをするのかもしれない。


やがて白髪の紳士は火葬され

空へと迎えられる。


あの夜、

眠ってしまった舟の中で

握りしめていた指輪を

今はまだ手持ち無沙汰に思いながら、

それでも時折

僕は湖のほとりに立ってあの島を想う。


もしも、

流星の流れる夜に

島の発電所の明かりが灯るのが見えたなら

その奥の青い森の中では何か不思議なことが起こっている。

あの日、僕が夢で見たような

やさしい不思議な出来事が。


そしてあの黒い髪の女が誰なのか、

それは誰も知らない。









~ おしまい ~


The tales of MIYOSHI 。jewelry

from another world🌛



















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