Chapter 5 - 落ちてきた男 -

- 落ちてきた男 -


突然、

女の悲鳴を聞いて僕は我に返った。


光の矢に気を取られて足を滑らせた女は、

2本の腕で屋上の手すりをかろうじて掴んだまま

テラスの外で宙ぶらりんの体を支えていた。


僕は慌てて女に駆け寄るとその腕を掴んだ。顔から血が吹き出そうになるほどの

渾身の力を込めて引き上げる。


見た目より重い女の体。

慎重に少しずつ。
腕が震えて手が汗ばんでいく。

あと少し…。

息が上がる。


そして、やっとのことで

女を救い上げた瞬間、

僕は。


自分の体がおかしな格好で

宙に浮くのを感じた。



さっきまで手すりの上にあった金属皿が

弧を描きながら宙を舞う。


ひるがえる僕の体と

飛び散る石たち。



” これはいけない ”


嫌な予感と一緒に、いつの間にか手すりの外に躍り出た僕の体は、

ああ、いま深い闇の中に落ちていく。


僕はなすすべもなく、

金属皿と運命を共にするのを覚悟すると

固く目をつむった。



The tales of "A thousand spells" jewelry

from another world🌝




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